INTEGRAL INFINITY : jade pebble

【bagel * bagel type2】

「ミルキーストロベリー、一ヶ月遅れか」
 ミズは相変わらずベーグル三昧の日々を送っている。
「今年は横取りできねーぞ、セイ」
 そう言ってミズは悪ガキのように笑った。今日は二月十四日だ。
「クリームチーズもチョコ味じゃねぇもんな」
「毎月思うけど、あれ本当にチーズなのか? とにかく、今年はちゃんと自覚してるのに何も無しだとは、去年より性質が悪いな」
「そんな事ねーよ、ほら」
 ミズは一体どこに隠し持っていたのか、今まで食っていたのとは違うベーグルを出してきた。
「やるよ。時期限定のバレンタインジュノ」
 うっすらピンクがかった生地の上にチョコレート味の何かがかかっている。
「今年の俺の目標は、セイをベーグルにはめる事だな。俺といつも一緒にいるくせに全然好きになんねーんだもん」
 堪りかねて何度かこいつに言ったが、俺はもそもそしたベーグルが好きじゃないんだ。
――それでも、恋人の好物なら買うのは苦にならない。
 俺は差し出されたのと全く同じベーグルをミズに見せた。

 

(2007/02/14)

jade pebble/目次

 当サイト初の小説から、まる一年後の掌編。サイトも小説内での時間も。