INTEGRAL INFINITY : jade pebble

【same】

「マジで一ヶ月遅れとは……」
 セイは俺が食ってるベーグルをまじまじと見ながら言った。
「いやチョコは入ってるけど去年とは別もんだぞ。ところで話変わるけど」
「――ミズ、お前いま物凄く期待に満ちた顔してるぞ。あれだろ、ホワイトデーのお返しを催促するつもりなんだろう?」
 また、セイに俺の考えてることを言い当てられた。
「だって俺、今年はバレンタイン忘れなかったじゃん。食いさしのコロッケパン以上のモノ、くれるんだろ?」
「そう言うミズは俺に何を用意してくれたんだ?」
 やべぇ!
 その事、すっかり忘れてた。
 セイはあの日、俺が持ってきたのと全く同じ、バレンタイン限定のベーグルをくれたんだ。俺だってこいつにお返し、しないとまずいじゃん!
「その様子だと、全然考えてなかったみたいだな」
「ご、ごめん」
 もっと責められるかと思ったけど、セイの態度は予想外にあっけらかんとしていた。助かったかな、と思ったけど。
「悪いな、実は俺もだ」
「へっ?」
「だから俺も、お前にホワイトデーのお返し、準備してないんだ」
 そ、それって去年のコロッケパンよりランク落ちてる、っつーかランク以前の問題じゃね!?
 いや、俺が言えた義理じゃないんだけどさ!
……けど、自分勝手でも何でも、残念なのが正直なところだよな。
「セイがそういうの忘れるだなんて、珍しいな」
 俺は感情がなるべく出ないよう気をつけながら、言った。
「忘れてたわけじゃないって。ただ、バレンタインは同じもの交換しただろ。だからホワイトデーのお返しも同等にしとくのが筋じゃないかと」
 なんだ……。
 セイの奴、ちゃんと考えてたんだな。俺、ちょっと自分が情けないかも。
「つまりはお揃いな。ミズ、放課後当然空いてるよな?」
「うん」
「じゃあ帰りに買いにいくぞ」
 って事は放課後デートかぁ。久しぶりかも。
 その後でたっぷりサービスしてやんないとな、と俺は思った。せめてもの罪滅ぼしに。

 

(2007/03/14)

jade pebble/目次

 「bagel * bagel type2」の一ヶ月後。その後コロッケパンよりはマシなものを買いに行ったことでしょう。同じ食べ物をおごりあったかも。