INTEGRAL INFINITY : extrastars

【continuation】

「「誕生日おめでとう」」
 俺と南斗の声がぴったりと重なった。互いの顔見て思わず吹き出す。
「こういうとき流石双子だ、って思うよね」
「――けど、こんな状況でわざわざ0時ジャストにアラームかけとく馬鹿、普通いねぇぜ?」
 俺が一言もの申すと南斗の奴は左の耳たぶを噛んできた。そのまま舌で弄られて俺は肩を竦める。
「おいっ……! まずスヌーズ止めとけって」
 抵抗して胸板を押し返してやると、南斗はめっちゃ不満そうな顔しながらも「確かにうるさいと集中できないしね」って言いながら携帯のアラーム設定を解除した。

「っつぅか、俺らもう十八なんだな」
「やっと法律上結婚できる年齢になったね」
「俺らは逆立ちしたって一生結婚なんか出来ねぇだろ?」
「……」
 すると南斗がやけに神妙そうな顔したから、俺はどうしたのか訊いてみた。
「すっごく普通の反応だね、北斗」
「あぁ? 何か文句あんのかよ」
「いや、そんなつもりじゃなかったんだけど、去年の北斗は凄く感傷的になってたじゃない? だから俺うっかり失言したかと思ったんだけど」
 あぁ――あれか。指輪はめて喜んでた久保田見て羨ましいかも、って思った時の事。
「去年は去年、今年は今年だろ」
 俺は殆どずっとつけてる左手人差し指のリングを南斗の目の前に突きつけた。

「約束だったら、お前に貰ったコレで十分じゃね?」

 何もかもが世間の言う「普通」とは一致しねぇ俺達だから、せめてはっきりとした何かで証明できないとあの頃は不安でたまんなかった。
 けど、あれから俺達にはマジでいろいろあって、それでもう気にしたり悩んだりすんのは時間の無駄じゃねぇの、って思うようになった――いちばん大事なのは今この瞬間の俺の、そして南斗の気持ちなんだ、って。
 それでもやっぱ、南斗が俺の事想って心配してくれてた瞬間の証明みてぇなもんだからこのリングは凄ぇ大事だ。
「めっちゃベタな手だったけど、あん時俺嬉しかったよ」
「北斗……」
「きっと恋愛っつぅのはお互い好きだって想う瞬間の連続でさ、だから俺とお前の一瞬一瞬が幸せだったらそれで良いんだよ」
 あとはどんだけその瞬間を繋げられるか、っつぅとこだけど、まぁ、南斗とだったら途方も無く長くなると思う。

「ねぇ、凄く続きがしたくなってきたんだけど」
「ちょっ! 俺珍しく良い事言ったと思ったのに反応それかよ!」
「だって! 目の前でそんな可愛い事言われたら我慢できなくなるのが普通じゃない!?」
「お前はその普通っつぅのが多すぎんだよ!!」
 ったく……一番の問題は南斗の自己下半身中なとこなんじゃね? その証拠にこいつ全然やめる気ねぇし。

 けど、いいか。

 どうせ南斗は「せっかく誕生日なんだから」とでも言ってごねるだろうし、俺も今日ぐらいは駄目出しで疲れるより幸せを満喫する方がいい。

 そして次に繋げた「瞬間」は、俺から仕掛けたキスのものだった。

 

(2007/06/13)

番外編/polestarsシリーズ/目次

 「eternity」の時点から北斗の考え方は随分ポジティブに変化しました。シリーズ的にはこれが最後の誕生日ものですが、十九の、二十歳の、そしてそれ以降の年も二人は幸せな誕生日を過ごすことでしょう。