INTEGRAL INFINITY : extrastars

【ホラービデオ編】

2006.08.24 07:21

「南斗、ビデオ借りに行かねぇ?」
 今日はまた親がいなくて、夏休みだし暇だしテレビを占領出来る。今積んでるゲームはもう無ぇし、せっかくだからたまには二人でやれることでもやろうと思ったわけだ。
「いいよ。行こうか」
 南斗はオッケーしてくれた。何か凄ぇ嬉しそうだ。
 結構俺、普段は一人で好き勝手やってっから、ひっつき魔のこいつにとっちゃ不満あるんだろうな。向こうからひっついてくる場合は俺のが文句言いたくなる状況多いけど。

 

2006.08.25 07:30

「お前何借りる?」
「俺はCDの方見てるから。ビデオは北斗の好きなので良いよ」

「夏っつったらやっぱホラーだよな、ホラー」
 俺はホラーコーナーの棚に行って、ちょっと前に評判になったタイトルのをいくつか抜き出した。最近の映画はビデオやDVDになんのが早ぇから良いよな。
 欲を言えばB級ホラーも借りて笑いたくもあんだけど、今日のところはいいか。

「南斗、お前借りるの決まった?」
「うん。北斗のも一緒にカウンターに持っていこうか?」
 南斗は用意周到にカゴ持ってたから、ここは甘えることにして、抱えてたビデオを全部そん中に突っ込んだ。

 

2006.08.29 07:46

「なっ、早速見ようぜ早速」
「俺も一緒に?」
 当たり前だろ、って言ってやると南斗の表情が緩んだ。
「その為にこんないっぱい菓子買い込んでるんだからな。映画館じゃ絶対出来ねぇ、キャーって叫んで隣に抱きつくってシチュもやれるぜ?」
「――ねぇ北斗、今から見る奴のジャンルって何?」「ん? ホラー」
 南斗が突然真面目な表情になった。また、何か企んでやがるのかもな。ま、今日はデート気分なとこあっから良いけど。

 雰囲気出すためにリビングのカーテンは全部がっちり閉めた。薄暗い部屋ん中でテレビの画面だけが浮かび上がってて、不気味な音楽がハマっている。
「うわ、凄ぇ楽しみだな、南斗」
 隣からは返事がねぇ。
 最初の一回は気にしなかったけど、何度も続けば流石におかしいって思う。
「なぁさっきから何で黙ってんの?」
 俺が不機嫌に言うと、南斗が突然こっちにしがみついてきた。
「――ごめん限界」
「ちょっ、今ビデオ見てんのに!?」
「駄目なんだ、怖すぎて画面見られない」
「……へっ?」
 目を凝らすと、南斗の肩は声と同じように震えている。
「南斗ってまさかこう言うの駄目なん!?」
 南斗は返事する代わりに顔を更に強く押し付けてきた。

 

2006.08.29 22:45

「んなこと言って、実は演技だってオチじゃねぇだろな」
「本当だって! ほんとに駄目……ひゃあぁっ!!」
 南斗は画面の中の主人公と同じタイミングで悲鳴をあげた。
 少し顔を上げさせると、両目を思いきり閉じている。
「お前部屋戻る?」
「嫌だ」
「南斗、こういう映画まるで駄目なんだろ?」
「視たり聴いたりしなければ大丈夫だよ……」
「それ、全然大丈夫って言わねぇって」
「だって折角北斗が一緒に、って言ってくれたのに」
 そう言って南斗は、俺の胸にすがりついた。
 しょうがねぇなぁ……こいつ、変なとこで頑固なんだもんな。
「じゃ、しっかり俺にしがみついてろ」

 結局そっからはビデオの内容どころじゃ無かったけど、普段俺に対して余裕っぽく振る舞ってる南斗がひたすらこっちを頼りきってる姿は、結構可愛いかもしんない。

 

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 ダブルデート編で菱井に「怯えて甘えて抱きつきまくれ」とアドバイスされたので我慢する南斗。しかも菱井の読みは当たってるし。