【ホワイトデー編】
2007.03.14〜2007.04.02 Web拍手お礼SS
俺は今、神妙に時計の針を見つめている。
――正直、日付変わんのが凄ぇ怖い。今はまだ十三日だけど、十四日になったらすかさずあいつがやってくるに違いない。
『ホワイトデーにはたっぷりお返ししてあげるからね』
バレンタインの朝、南斗の奴がにっこり笑いながら宣言しやがった。南斗が俺にあの顔を見せんのは、大抵怒ってるかろくでもねぇ事考えてやがる時だ。
そもそも晩に好き勝手やってからの発言だし、後でよりにもよって地学準備室で酷ぇ目に遭わされたし……俺もう、暫くチョコレート見たくねぇ。
けど結局、一つ屋根の下で暮らしてる以上は逃げ切れねぇんだよな。俺、もうちょっと腹を括ったほうが良いんかな。
そうこう考えてるうちに時計の針が十二時を指した。と同時に、部屋のドアがノックされる。ホント、毎度毎度こういうとこだけ律儀なんだよな。
「入れよ」
俺が声かけると、南斗が気味悪ぃぐらいにこにこしながら、俺の部屋ん中に入ってきた。ところが俺の顔見るなり、いきなり不機嫌そうな表情になる。
「ちょっと、そんなに怯えなくても良いじゃない」
お、俺そんなに気持ちが態度に出てたんかな……?
「別に痛めつけるつもりじゃないんだから」
「お前に付き合ってっと十分消耗すんだよ!」
「あ、北斗顔赤い。可愛い」
「あんまふざけっと部屋から叩き出すぞ」
それは困る、って南斗はにやけながら言った。
「とにかく、まずはホワイトデーだけど。ちゃんと飴用意したよ?」
確かに、南斗は手に紙袋を提げている。
「そん中に入ってんの? 貸せよ」
「その前に――ガムシロップと水飴どっちが良い?」
「は?」
ガムシロップ?
水飴?
まさかまさか、またこいつは……!
「だから食いもん粗末にすんなって言ってんだろぉっ!」
「あ。流石にわかる?」
「お前が液体出してきたら要注意なんだよ!」
「大きな声出すと親が起きてくるかもよ?」
「出させてんのはお前だろうが……」
やべ、マジで頭痛くなってきた。あぁもう、こいついい加減黙らせとくべきなんじゃないだろうか。
「で、さっきの質問だけど。どっちもやだ。冷やし飴持ってこい」
「えぇ!? 何それ」
「ガムシロ単体で飲む趣味ねぇし、水飴はこないだ幸崎先生に貰ってっからネタ被ってるし。あぁでも、今の季節だったらまだ飴湯か。とにかくそれじゃねぇと受け付けねぇからな」
「でもそんなの聞いた事無い……」
「南斗ともあろうもんが教養ねぇな。調べてくれば?」
俺が突き放すと、南斗は肩を落として自分の部屋に戻っていった。
その手の水飴と生姜で簡単に作れるみてぇだ、って事にあいつが気付くまで、俺は安穏と眠ってられそうだ。
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