【三年次ハロウィン前日譚編】
2007.10.29〜2007.11.08 Web拍手お礼SS
「菱井ー、今日帰り買いもん付き合ってくんね?」
「いーけど、何処いくんだ?」
「駄菓子屋」
あー、と菱井は納得のうなり声を上げる。
「そっかー、ハロウィンの時期だな」
北斗が買おうとしているのは、ハロウィンの夜の「南斗除け」だ。去年、北斗は明確な下心を持って「トリックオアトリート?」を連発する南斗にその都度菓子を渡すことで「いたずら」を回避したという経験がある。
「でもさー北斗。天宮南斗はお前に関しちゃ馬鹿だけど馬鹿じゃねーんだから、同じ手は二度と通用しないんじゃねーの?」
「そうなんだよなぁ……俺もそれが怖いっつぅか」
でも何の備えもしてねぇよりいいだろ、と北斗は軽く肩を竦めた。
彼は南斗とは恋人同士なのだから、少々の「いたずら」ぐらい大目に見てやるべきなのだろうが、どうも南斗が普段から暴走しがちなので辟易しているらしい。情熱的すぎる恋人も考えものだ――尤も、南斗の本性を知る菱井達は簡単に「色ボケ」で片付けているのだが。
2007.10.29〜2007.11.08 Web拍手お礼SS
「酒谷」
「なに、ミナミヤ」
「ハロウィンのお菓子防護壁を突破するにはどうしたら良いと思う?」
「――馬鹿な事考えてないで勉強しろ」
酒谷は、南斗を横目でじろり、と睨み付けた。
「だって、それがずっと心に引っかってて」
大まじめに言う南斗の眉間を、酒谷のシャープペンシルが突いた。
「どんなに頑張ってもミナミヤに勝てなくてハンカチ噛んでる連中が知ったらどう思うだろうね」
南斗の脳内では、勉強よりも北斗と愛を育む事の方がよほどの重大事項なのに違いない。そもそも彼が屈指の優等生になったのだって、言ってみれば北斗のためなのだ。
「考えられる方法は、キタミヤが用意してるだろう菓子を見つけて隠す事ぐらいだね」
やっぱりそれしか無いか、と南斗が溜息をつく。
「当然、キタミヤだってミナミヤがそう動くだろう事ぐらい解ってるだろうけどね」
北斗にお菓子の隠し場所を、南斗には黙って提供してやろう、と酒谷は密かに思った。
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