INTEGRAL INFINITY : extrastars

【久保田の心の友(ディアフレンド):猫耳】

2007.04.03 20:53

 廊下で見かけた会長は、頬に目立つ湿布を貼っつけていた。
「ちょ、ちょっ!?」
 俺は思わず通りすがりに会長の腕を掴み、出てきたばかりの男子トイレに引きずり込んだ。
 ほんの数人しか知らねー事だけど、実は俺たちは密かに互いを認め合う心の友だ。

 何でかってそりゃ、エロバナを思う存分語り合える相手は他にゃいねえからな。

 俺の友達連中は、何故か男なのにそっち方面の興味薄そうな奴ばっかりだ。緑川なんかカメラ一辺倒すぎて将来心配になる。下田はギャルゲーにも手ぇ出すけど、本質はやりこみゲーマーだから萌えじゃなくて燃えが大好きだ。やっぱり俺に一番感覚近いのは会長なんだよな。
 あっちはあっちで周りにエロを語れる友達いなそーだし。副会長とかそういうの嫌いそうだもんな。会長には一年の時からクリーンなイメージついてるから、余計エロバナなんかできないだろう。

「その頬どうしたん? カノジョにぶたれた?」
「久保田は誤魔化すわけにはいかないね。皆には親がいきなり開けたドアに顔ぶつけたって言ってるけど」
 そう言って会長は頬の湿布をめくった。
 うわぁ、漫画みてーな手形……。

 

2007.04.04 13:01

「で、今度は何やって怒らせた?」
「例のやつの尻尾、あんまり可愛かったもんだから、つい遊びすぎちゃって」
「なに、アレ早速使ったのか!? どうだった?」
 ちなみにアレとはこないだどの色が一番萌えるかについて二人で熱く議論を闘わせた「子猫ちゃん三点セット」のことだ。
「あれはいい、ほんといい。俺にとっては視覚効果最高。だからやりすぎて叩かれたんだけど」
「……そんなら、ま、自業自得だわな」

 

2007.04.07 12:03

「そんなに好きなら自分が着けろ、って言われちやったよ」
「そりゃヤバイだろ、さすがに」
 とは言ったものの、会長のルックスだったら耳ぐらいなら似合うかもしんないな。
 会長のカノジョはどうやら本気で怒っているらしく、終わってから一言も口をきいてくれないらしい。
「別れるって言われたらどうしよう……」
「そんな落ち込むなよ。会長だったらすぐ次が見付かるって」
「嫌なんだ、他じゃ絶対無理、代わりになんてならないし、俺もいらない」
――俺が感心してるのは、会長がほんと一途だって事だ。あの人気なら女子をいくらだってつまみ食いできるだろーに。
 カノジョ一人に集中してるからこそ、女子どもは王子様会長が実は結構なケダモノだって知らずに騒いでられんだろうな。いや、夏のプール事件で会長にエッチする仲のカノジョがいる事は知れわたってるはずなんだけど、女子は目をつぶってるようだ。

 今日の昼休みは一年の頃からの友達連中と集まる日だ。
 約一名を除いて、昼飯後のまったりした時間を過ごしている。
 俺は馬鹿話してる最中、ふと朝の会長との会話を思いだした。そういやあの会長をあそこまで夢中にさせるカノジョってどんな子なんだろう。しょっちゅう写真見せろと言ってるけど、毎回笑顔でかわされてしまう。
 きっと山口前副会長みたいなすげー美人で、他人に見せるなんてもったいなくて出来ないんだろうな。
 あ、そうだ。
「天宮。会長のカノジョってどんな子?」
「知るか」
「またまた。兄弟なんだから顔ぐらい見た事あるんじゃねえの?」
「知らねぇったら知らねぇ!」
 天宮はイライラした様子で牛乳パックの穴にストローをブスブス抜き挿しした。今日のこいつやたら機嫌悪いんだよな。菱井が言うには朝からみてーだけど。

 

2007.04.07 23:05

 いやー、改めて見るとほんと同じ顔だな、天宮と会長って。けどこいつは王子様って感じは全くしない。天宮の中身は俺達と同じそのへんの高校生だ。
 何より違うのは、社交的な会長に対して天宮は気を許した奴(勿論俺もその中に入ってる)以外には人見知りしがちなあたりだな。一年の最初の頃よりは相当マシになったけど。
 世話係の菱井がよく天宮の事を「気難しい姫」って言うけど、外面に関して会長と対比させるぶんにはわからんでもない。
 顔は同じでも印象が全然違うから別人にしか見えねーけど、でも同じ顔なんだよな――だったら天宮で試してみても同じなわけだな。

 

2007.04.08 08:08

 幸いにも俺は今「子猫ちゃん三点セット」を持っている(何故学校に持ってきてるのか、そんなやぼな事は聞かないでほしい)。
 俺は猫耳カチューシャを取り出すと、まだグサグサやっている天宮の背後から近付いてそれを装着させた。
「久保田、何」
 さすがに違和感に気付いた天宮の前に素早く回る。
「やっぱ天宮の顔だと結構見られるもんだな」
「久保っち、なんでいきなりネコミミよ」
「つーかそんなもんどうして持ってんの」
 あっけに取られてる天宮の真正面から体をずらすと、すかさず緑川が写真を撮った。
 他の仲間達もウケて手とか叩いている。
「耳と髪と肌色で三毛猫、って感じだな」
 俺は黒猫萌えだからそうなったけど、会長が選んでた茶系ならもっと一体感が出ただろうな。あ、会長本人なら黒だな。
「天宮。こっちのファー付きリストバンドも着けてみる気ねぇ?」
「だぁーっ!!」
 天宮は顔真っ赤にして、猫耳カチューシャを乱暴に外すと俺に投げつける。
「俺、教室帰るっっ!」
「ありゃ、行っちまった」
「気が立っている人間に悪戯する久保田クンが無神経すぎるのだよ」
「平然と写真撮ってた緑川にゃ言われたくねぇな」

「……あれだけ情報握っといて、全く結びつけらんない久保っちの鈍感さが羨ましいよ」

「菱井、何か言った?」
「いや、別に。北斗へのフォローは俺がやっとくわ」
 おごり一回は覚悟しとけよ、と言われたくとこで予鈴が鳴った。

 

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 南斗は、相手を知っている酒谷や小学メンバーには一方的に「報告」だけしてますが、何も知らない久保田相手だとああしたいこうしたいだの願望トーク炸裂させている模様。きっと酒谷が聞いたら「そんなイメージが急降下する会話するな!」と怒りまくる低レベル内容でしょう。