【make me yours ⇔ mine 01】
「ねーえ、北斗」
「駄目。俺は寝る」
わざとらしい甘え声ですがりついてきた南斗を、俺は強引に引きはがした。
「えぇっ、今晩って絶好のチャンスだよ?」
「こっちは凄ぇ疲れてんだよ、毎日毎日練習ばっかでさぁ。ヤッたら俺、確実に明日の朝練で死ぬ」
「――何でそんな面倒なもの引き受けたわけ?」
「じゃんけんで負けたんだからしょうがねぇよ。俺も予想外だよ」
まさか、体育祭限定のにわか団員ですら朝と放課後たっぷりしごかれる羽目になるなんてな。マジで怖ぇよ応援部。
五月末にあるうちの学校の体育祭じゃ紅組白組それぞれに応援団が付くんだけど、元々人数が少ない応援部を更に二つに分けると到底人が足りない。だから、応援部の応援として二年から一クラスにつき一人助っ人を出すのが慣例になっている。俺は運悪くそれに選ばれちまって、連日応援部のシゴキを受けてるっつうわけだ。
あー……、俺、スポーツ関係の部活に入んなくて良かったなぁ。あのノリ正直合わねぇし。まぁ応援部は体育会系魂の塊みたいなもんだから他より凄いのかもしんねぇけど。そっか、だから部員少ねぇのかもな。
「本番まであと一週間切ってんじゃん。終わるまでは触んの我慢しろ」
「触るのも!?」
それ何て拷問、って言いながら南斗は眉を思いっきり下がらせた。んっとにこいつは、もう……。
「キスと添い寝ぐらいは勘弁してやるよ。余計なことさえしなきゃな」
南斗は返事もせずに、また俺に抱きついてきた。
体育祭前日の放課後も、本番直前って事でいつも以上に応援部員から気合い入れてしごかれた。大声出し過ぎで凄ぇ喉痛い、これで明日の本番に声潰れてたら一体どうすんだろ。
白組応援団の練習は第一校舎の屋上でやってるから、こっから第二校舎にある生徒会室の窓が見える。カーテンは閉まってるけど、電気が点いてるらしいのは判った。
もしかして南斗、あそこにいんのかな。仕事終わってんだったら一緒に帰るとして、とりあえずいるかどうかだけ確認しよ。
俺は学ラン姿のまま第二校舎に入った。学ランは俺の中学の時の奴で、今はちょっとキツい。しかも、茶髪は駄目だって言われて髪の色も黒に戻してる。見た目だけならマジで中学生に戻ったみてぇな感じだ。
練習中以外の時に南斗と間違われるかも、って心配してたんだけど、今んとこ思ったよりその回数が少ない。菱井は「最近じゃお前ら、何となく雰囲気違うからじゃねーの?」なんて言ってるけど、具体的にどう違うのかはちっとも言わねぇ。言うと俺が怒るから、ってどういう事なんだ?
生徒会室前に到着した俺はドアを勢いよく開けた。
「南斗、いる――――っ!?」
俺の視界に飛び込んできたのは。
上半身すっ裸の南斗と、その肩に手ぇかけてる山口副会長だった。
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