【make me yours ⇔ mine 05】
最初は、ただ見ちまったものに驚くばっかで訳わかんなかった。
菱井と話して、一人になった途端にじわじわと嫌な気分が湧いてきて――じゃあどうすりゃいいんだろ、って考えて考えて、結局思いつけたのは直球勝負だっけだった。
――これって端から見りゃ、どう考えてもカラダで繋ぎ止めようとしてる、って奴だよな。自分でやってる事が滅茶苦茶恥ずい。けど、嫌なもんは嫌だ。
たとえどんなつもりでも、南斗が俺以外の誰かに触んのなんか認めらんねぇ。
南斗は俺の顔をまじまじと見て、それから何故か吹き出した。
「おい、何笑ってんだよ」
「ごめん。急に気が抜けたから、つい……だって、三分前まで『別れよう』って言われるんじゃないか、って思ってたんだ。どう見ても誤解されそうなシチュエーションだったし」
そう言って南斗はあの日本当は何があったのか説明してくれた。結局浮気かもって思ったのは俺の勘違いで、山口副会長は単に南斗をからかってただけ、って事らしい。
どっちにしろあの人がお騒がせだったのにゃ変わりねぇけどな……。
「それでね、俺、凄く嬉しいんだ」
「は? 何が?」
「今まで、俺は北斗のものなんだ、って自信が持てなかったから」
何だそりゃ。普通言うなら逆なんじゃねぇんだろうか。
「北斗は俺のもの、って言う意識は常にあるよ。だからお前が他の奴と楽しそうにしているのを見るのは嫌だし、出来ることなら一日中ずっと自分の隣に居て欲しいよ。でも北斗はそういう態度、したこと無かっただろう?」
「あ……」
南斗が言いたい事、上手く自分の言葉に出来ねぇけど、ちゃんと解った。
「んな事心配してんじゃねぇよ。南斗は間違いなく俺んだよ」
南斗はいつもの笑顔じゃなくて、マジで嬉しそうな子供の笑顔になった。
「でもね、北斗」
「ん?」
「――俺としては、北斗が俺のこと『そう言う風に』見てた、って事に凄く凄く傷ついたんですが?」
「う、あ……」
俺は言葉に詰まる。そりゃ、深く考えなくたって南斗にしてみりゃ失礼な話だったし(ついでに山口副会長にも)。
「ごめん、マジでごめん」
「だったら、いい?」
わざとらしい甘い声――ちょっ、こいつ何考えてんだ!?
「馬鹿野郎、お前ここ学校って解ってんのか?」
「体育倉庫で、って或る意味凄い定番のシチュエーションだよね」
「誰か来たらどうすんだよ」
「最初に来ない、って言ったのは北斗だよ。体育祭の段取り的にも、もう二年以下は流れ解散だし、片付けは盆踊りの櫓ぐらいだけど、それは大倉庫のほうのはずだし」
しまった。こいつ生徒会役員なんてやってっから、行事に関することは全部把握してやがるんだ。
「北斗だって実は、場合によってはこうするつもりだったんじゃないの?」
この倉庫に入ったときは頭煮えててリスク計算しきれてなかったけど、確かに、図星だった。
南斗は俺の襟に手をかけて、詰め襟はボタン多くて大変だ、なんて事を楽しそうに呟いていた。
fin.
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