【ホームビデオ編 その1】
2006.10.20 07:52
日曜の朝遅く起きて一階行くと、南斗がビデオテープの山と格闘していた。
「お前、何やってんの?」
「父さんがね、昔撮ったビデオをDVDに移したいんだって」
「それで何でお前がやってんの? 自分でやれよ父さん」
「父さんは今日は休日出勤。それにお宝映像見つかるかもしれないし」
あらテレビ番組に投稿するの、と母さんが俺のぶんの朝メシを用意しながら言った。
……俺のカンだけど、そりゃあ絶対に違うと思う。
2006.10.20 22:27
「配線は繋いだし、後はビデオデッキから入力したものをダビングするだけ」
そう言って南斗はそこら辺にあるビデオテープを適当にデッキに突っ込んだ。
「うっわ、小っさ!」
テレビに映し出されたのは、まだ小学校に上がってねぇぐらいの年頃の俺ら双子だった。
「これ、明生(あきお)の結婚披露宴の時のじゃないかしら?」
明生叔父さんは母さんの弟だ。確かに、俺ら二人とも半ズボンの子供用スーツなんか着てんな。
「まだ二人とも小さかったけど、預ける先が無くて連れていったのよね……あの頃はちゃんと出来たのに、今観るとどっちが北斗でどっちが南斗なのか判らないわ」
正直俺にもわかんねぇ。今以上にクローンが二人並んでるように見える。
「俺は判るよ。多分右が北斗」
「マジ?」
俺と母さんは半信半疑だったけど、暫くして南斗が指した方がもう片方を「なっちゃん」と呼んだ事で、こいつの正しさが証明された。
2006.10.21 12:19
「このテープ二本目じゃない? ほら、だって明生と美咲さんが会場の外で挨拶してるもの」
『こら、ほっくん暴れないの!』
母さんの解説と被るように、画面の中の(未だ随分若い)母さんの声がした。走り回る俺と捕まえようとする母さんが映っている。
突然画面が揺れ、カメラの向きが変わる。南斗が父さんの足にしがみついたようだ。
『ん、南斗?』
『あのねあのね、おとうさん、ほっくんをぼくにちょうだい』
「ぶほっ!!」
やべぇ、牛乳吹いた!
『どうしたんだーいきなり』
『だっておムコさんっておヨメさんのおとうさんにおねがいするんでしょ?』
恐ろしいことに、ちっこい南斗は本気みてぇだった。
『ははは、男の子には無理だよ。それに北斗が女の子でも南斗のお嫁さんには出来ないよ』
『なんで? なんで?』
『きょうだいは結婚しちゃ駄目なんだ』
『やだぁー! ほっくんがおヨメさんじゃなきゃやなのー! ほっくんがいいのー、うわぁぁぁん……』
「――お前バカ?」
あっけにとられた俺は思わず言った。流石の南斗も過去の恥ずかしい姿を前に、掌で顔を覆っていた。
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