【三年次クラス発表編 その1】
2007.04.02〜2007.05.03 Web拍手お礼SS
「や……った!」
南斗は掲示板に貼られた紙を凝視しながら、喜びに肩を震わせた。
「何年? 十一年、いや十二年目にして、やっと、やっと……!」
「ミナミヤ、周りが何事か、って顔で見てるよ」
背後から酒谷に腰を叩かれ、南斗は我に返る。
「で、その変な表情の原因は?」
あれ、と言って南斗は笑顔で掲示されている紙――三年のクラス表を指差した。
「ああ、一組か。そりゃ、お互いの学力と進路が一致してたら、なるだろうね」
酒谷はやれやれ、と首を振った。
それにしても、と酒谷は思う。
入学時は平々凡々な成績だった北斗が、今や最も定員の少ない国立理系クラスに名を連ねるまでになろうとは。
未だに学年首席の座を守り続けている南斗も、当然一組である。双子である天宮兄弟が同じクラスになるのは、幼稚園以来の事なのだ。
「少なくとも生徒会引退まではヘマしないでよ」
ミナミヤ浮かれすぎで凄い心配、と酒谷はぼやいた。
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クラス発表を前にして、二人は絶望的な表情を向け合っている。
「あらかじめわかっちゃいたとは言え」
「実際目にすんと、結構堪えんなー……」
三年次の北斗と菱井のクラスは、それぞれ一組と三組だ。三年はそれまでの成績と進路別でクラス分けを行うため、国公立志望の北斗と私立志望の菱井では必然的に別々のクラスになってしまう。
「俺、ホントは三年も菱井と同じクラスが良かった」
「俺もだよ、当たり前じゃん!」
別れを惜しみひしと抱き合う二人を、極寒の視線が見つめていた。
「うっわ、会長すげーこえー顔」
「さっきは一組だった事喜んでたのにな」
南斗を横目に見ながら、生徒達は噂する。
「兄も同じ一組だからな……。一位の座は不動とはいえ、最近毎回五位以内に食い込んでんじゃん」
「今や強力なライバルだもんな、仲悪いし」
一組の他の奴らは苦労しそうだな、と彼らは国立理系クラスの面々に同情した。
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(どうしよう……)
(く、空気が重い! 身の置き所がない気がする)
新・三年一組の面々は、教室の右前隅にちらちらと視線をやりながらも、気まずい雰囲気を感じていた。
何しろ、最も廊下側の列の前から二番目に座る生徒の機嫌が恐ろしく悪そうなのだ。目の前の生徒のぴんと伸びた背中に、殺気混じりの視線をぶつけている。
三年一組出席番号一番は、甘い笑顔がトレードマークの生徒会長、天宮南斗。
そして二番は、南斗の双子の兄で、彼をライバル視しているともっぱらの噂の天宮北斗だ。
二人は一年の時に学年を巻き込む大喧嘩をし、以来校内ですれ違っても目すら合わせない。生徒全員に平等に笑顔を振りまく南斗は北斗とその親友の菱井良介には冷淡だし、元々気に入った人間以外には壁を作る北斗も、弟に歩み寄る気はさらさら無いようだ。
二年次に転入してきた和地一弥は双子の幼馴染みで、しかも彼は副会長の酒谷統の「下僕」に志願してしまった。そのせいか、南斗の親友のはずの酒谷と北斗がそれなりに親しく会話するようになり、彼らの関係は一般生徒には計り知れないほど微妙で複雑になってしまったようだ。
そんな二人が、よりによって三年では同じクラスになってしまったのだ。しかも名字が同じなので、必然的に出席番号が隣り合う。一番と二番では授業でペアを組む事も多い。
これからの一年間を思い、皆それぞれ内心で溜息をついた。
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