【ふしぎの国のアリス少年 01】
警告:はっきり言ってドン引きバカ文章です。
青空広がる気持ちの良い午後、タイプの違う美形(でも女装)兄弟が土手に座っていました。
読書をしている兄さんは男らしく整った容貌です。弟のアリスは甘い顔立ちですが、(多分)大方の予想を激しく裏切って黒髪の少年でした。ちなみに実在のアリスは黒髪ボブだったそうですね。
アリスは兄さんの読んでいる本をちらちらと見ましたが、内心では六法全書の何処が面白いんだろうか、と思っていました。アリスだって本気を出せば読んで理解する事が出来る頭を持ってますが、彼は六法全書より天文年鑑の方が好みなのです。それだってあんまり普通じゃありませんが。
退屈で退屈で、アリスは眠くなってきたのですが、そのとき彼のすぐ横を、ピンクのカラコンとイヤーカフスをつけた白ウサギが通り過ぎました。
「やべぇ、マジ急がねぇと遅刻しちまう!」
ウサギなのにきちんとチョッキを着込んでいて懐中時計で時刻を確認しているのは、アリスにとってはどうでも良いことでした。彼の目には、白ウサギのピンと立った大きな耳、まん丸くて可愛い尻尾しか映っていなかったのです。
アリスは不埒な目的で白ウサギの後を追いかけました。読書に夢中の兄さんは迷わず放置です。
白ウサギは自分の身に貞操の危機が迫っているなどとは夢にも思わず、慌てて生け垣の下のウサギ穴に飛び込みました。
「やった、自分から逃げ場のないところに飛び込んでくれた」
……こいつアリス服を着てるくせに、目つきは赤ずきんちゃんを狙うオオカミです。
後に続いたアリスでしたが、当然白ウサギを追い詰められるわけありません。だってこれ、ふしぎの国に続く通路なんですから。お約束通りアリスは穴の底へ底へと落ちていきました。
ウサギ穴は何処まで続くかわからないぐらい長いうえ、落下速度はとてもゆっくりだったので、アリスは落ちている間ずっと白ウサギで妄想しながら時間を潰しました。
あのフワフワした尻尾を弄ったり長い耳に齧り付いたりしたら、滅多な事では鳴かないウサギも甘い声で鳴くかもしれません。あれウサ耳に齧り付きたがってたのは兄さんの方じゃなかったっけ、とアリスは思いましたが、作者の気が狂った一週間分の日記を読んだ人にしかわからないネタについて深く考えても仕方ないので、気にせず白ウサギのウサ耳に萌えることにしました。
妄想も何ラウンド目かに突入したところで、突然アリスの身体は地面に着地しました。白ウサギの影を追って通路をすすんでいくと、やがてお約束の大広間に辿り着きます。
広間にはテーブルが一つあり、その上に金色の鍵が置いてありました。周囲の壁にはいろんなドアがずらりと並んでいます。施錠されているらしくノブを引っ張ってみてもびくともしません。
「こういう場合のセオリーって、目立たない小さいドアを探す事だよね」
妙に知恵の回る、アリスらしくないアリスです。
とにかく壁を探索してみますと、確かにあやしげな小さいドアがありました。試しに金の鍵を鍵穴に差し込んで回してみると、カチャリと音がしてドアが開きました。
でも当然、アリスにくぐれるはずがありません。なにせ今度国際結婚するらしい○カちゃんサイズぐらいしかないんですから。
ですが、ドアをくぐらない事には先に進めません。何らかの手がかりを求めてアリスは再び広間を探索することにしました。すると、テーブルの上にさっきは間違いなく存在しなかった小瓶を発見しました。中には黄金色のトロリとした液体が入っています。
いったいどこから湧いて出たんだ、と疑問に思うのはナンセンスです。「アリス」だからそういうものです。
「思いっきり怪しいけど、怪しすぎてかえってアタリっぽいなぁ」
アリスは思い切って瓶の蓋を開け、腰に手を当てるポーズで一気呑みしました……。
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