【New Love 05】
2010.11.17〜2010.12.28 web拍手お礼SS
菱井が気が付いたとき、小野寺はこちらに背を向けていた。
「――優?」
項から背骨にかけてのラインにそこはかとなく不安を覚え、菱井は小野寺に声を掛けた。
「なー、こっち向けってば」
起きているのは間違いないだろうに、菱井を無視する態度がだんだん気に入らなくなって、小野寺の肩を掴んで無理矢理仰向かせようとする。
しばらくの攻防の後、観念したのか小野寺が体の向きを変えた。
「……」
「おい、何だよその顔」
小野寺は、何かに耐えるように顔をくしゃりと歪ませ目を伏せていた。
「――良介は、あんな声を出すのか」
え、と呟き菱井は瞼を瞬かせ――何を言われたのか理解して真っ赤になった。
「や、あの、もう我慢する必要ねーと思って……」
小野寺は無言で菱井の右手首を掴むと、その指を一通り観察した。
「確かに噛んでいないな」
「や、やっぱ我慢しといた方が良かったか?」
「そんなわけが無いだろう」
そう言って小野寺は、菱井の右人差し指に口付けた。
「こっちがどうにかなりそうだった」
そのまま小野寺の咥内に含まれる、指先。思わず震える菱井の身体。
暫く愛撫された指は、解放されると気化熱で僅かの間冷える。
「今度からは、二度と我慢するなよ」
菱井は頷き、お返しとばかりに小野寺の手を捕まえた。
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