INTEGRAL INFINITY : polestars

 俺と南斗はガキの頃、よく「どっちが上か」で喧嘩した。同じ顔で揃って同じような体格に育った一卵性双生児だから、かえってどんな些細な事でも比較対照になった。
 俺が北斗七星、南斗が南斗六星にちなんで名付けられたので、
『俺は星が七個でお前は六個だから、俺のほうが勝ちだろ』
 と切り出してすっかり勝った気になったが、南斗は負けじと
『北斗は死を司ってて南斗は生を司るんだよ。こっちの方がありがたみがあると思うんだけど』
 なんて、中国の昔の話まで調べて対抗してきた。
 お約束のように神拳勝負もやったけど、ヒートアップしすぎていつの間にか「北 VS 南」という対決にすり替わった。出身地でも無いのにお互い北海道と沖縄に詳しくなったりしてな。
 最後にまた星空に戻って、俺は決定打を打ち出した。
『北は北極星あるけど、南極星って無いだろ』
 これには南斗は言い返せず、以降喧嘩が起きる事は無かった……っつぅより、南斗がノッてこなくなった。

 あの頃は何でも競い合えて、あいつに誇れるものもたくさんあったけど――今は、北極星しか無い。

 

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 これはおよそ十年前、創作サークルに投稿した同名の小説が原型です。第一話掲載後にサークルが自然消滅してしまったのですが、自分の原点でもあるので改めて続きを書いてみることにしました。ペースはのんびりです。