【make me yours ⇔ mine 03】
第二校舎を出た俺は即座に菱井に電話をかけた。
「もしもし、菱井今どこ?」
『俺? 自分の部屋』
「今日は会長の呼び出しかかってねぇなら、時間あるな」
『あるけど、北斗何かあったのか?』
「長くなりそうだし、歩きながらじゃ話しにくい。駅前のマック来れる?」
『オッケー』
「じゃあ現地集合。このあと俺の携帯繋がらなくなるから」
俺は通話を切るついでに、携帯の電源も落とした。
マックに先に到着したのは俺の方で、菱井が来たのは五分ぐらい後だった。駅からの距離を考えると当然だろう。
俺達はなるべく目立たない隅っこの方の席に座った。
「――で、また天宮南斗がらみか?」
南斗と揉めるたびに俺が押し掛けるからか、菱井の態度は何となく、慣れた感じがする。
「そう言っちゃそうなんだけどさぁ……菱井、山口副会長ってその、男関係ってどうなってんの?」
俺は出来る限り声を小さくして菱井に囁いた。
「は? 何でそこで郁姉(いくねぇ)が出てくんの?」
「実はさっき生徒会室で、上半身何も着てねぇ南斗に抱きつこうとしてる副会長見ちまったんだけど」
菱井は目をまん丸くして、ついでに摘んでたナゲットをソースに指ごと突っ込んだ。
「そりゃあ、また、衝撃的な現場を目撃したな……」
「で、俺の質問についてはどうよ」
「彼氏がいるって話は聞かねーけど、俺もあの人の事はガキの頃からよく解んねーんだよ。住んでるとこ離れてたから、そんなに遊んだ事無いし」
指についたソースを舐めながら菱井は言った。
「小野寺会長は何か言ってねぇの?」
「優、郁姉については利害関係一致しない限りノータッチだ」
「何というか、まぁ、会長らしいな――結局、副会長が実は南斗のことが好きかどうか、っつぅのは判んねぇってことか」
あぁそう言う話に繋がんのね、と菱井は呟く。
「あの人が天宮南斗に惚れてるって、そんな感じはしねーけどな。だったら一年前からウザいぐらいのアプローチしてそうだろ」
ウザい……何かこう、スッと胸ん中落ちていったぞ。
「郁姉だったら面白半分とか、割り切りとかそっちの方が当たってそうな気が……特定の彼氏作るより、周りはみんなアタシのモノで当然、ってゆーような。悪気は全然無さそうなんだけどなー」
菱井の表情に、苦々しいものが浮かぶ。そう言や副会長って、会長のこと「優ちゃん」って呼んで普通にまとわりついてるもんな。こいつとしても普段から色々思うところがあるんだろう。
「でさ、北斗。話本筋に戻すけど、お前が見たって現場の原因、なんとか郁姉の方に見つけようとしてねーか?」
「へ?」
「天宮南斗は悪くない、悪くないって思い込もうとしてる感じ」
言葉が詰まっちまった、ってことは、多分図星だろうな……。菱井はいつだって、俺が気付けない俺の心を読んじまうんだ。
「まー、あの色ボケ北斗バカがおいそれと浮気するようには思えねーけど――でも、脱いでたって言うし、うーん……」
菱井の言った「色ボケ」と言う単語に俺は思わず吹き出した。
いやそこ笑うとこじゃねぇだろ、俺。
「あ。もしかして……!?」
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