INTEGRAL INFINITY : extrastars

【ダブルデート編 その2】

2006.08.04 07:41

「昼メシどうする?」
「そのへんの売店で買えばいーんじゃねーの、ホットドッグとか」
 南斗達の方を見ると、二人は軽く頷いた。それで良いって事だよな。
……ジャンクフードを食べる小野寺先輩か。想像したこと無かったけど。

 俺達はそれぞれ好きなもん買って、売店ワゴンの近くに並んでるテーブル占領してメシを食った。
 焼そば食う小野寺先輩はめっちゃ普通で、学校でとか菱井の話でのイメージとのギャップが凄くてついつい先輩をチラ見ばっかしてた。
「なんかさぁ、お前ら三人変な構図なんだけど」
 菱井に言われて、俺自身も南斗にガン見されてる事に気付いた。
 俺が先輩観察してんのに怒ってんのか?

「いくら北斗が食ってんのが食ってるもんだからって、あからさまに凝視するなよ……」
「かなりいい眺めなんだから横槍入れないでよ。先輩だって同じ状況だったらそう思うでしょう?」
「俺なら口に入れるところから細かく指示する」
「ゲッ」
 最初、菱井達の会話の意味に気付かなかったが、解ったと同時に残ってたホットドッグを一気に口ん中に押し込んだ。

 

2006.08.07 07:47

「だぁーっ、もう信じらんねぇ! ところ構わず変な妄想すんじゃねぇよ! 菱井も! 知らなくて良かった事気付かせるんじゃねぇ!」
「――北斗、荒れちゃった」
「お前のせいだろ」
「この場合責任は菱井君も俺と等分だよ」
「お前達、食べおわったなら次行くぞ」
「小野寺先輩、マイペース……」

 メシ食ってすぐに腹ん中かき回すようなアトラクションはまずいだろう、という先輩の提案で、俺達はライド系のホラーハウス(鼠の国にあるような奴。けどこっちのは和風だ)に向かった。
「見て見て。カートは二人乗りだって」
「「言っとくけどお化けにビビってお前に抱きつくなんてありえないから」」
 見事に菱井とハモった。
「ちぇ」
「……」
 けど、俺達の懸念は予想外の方向で裏切られた。
 カートに乗り込むために動く歩道の上を歩いてるとき、係員によって俺と小野寺先輩、南斗と菱井の組みあわせで振り分けられてしまったのだ。

 

2006.08.07 13:05

【北斗と小野寺】

――すげぇ居心地悪ぃ。
 何でこんな暗い中、小野寺先輩と二人っきりなんだろう。何喋って良いのか全然判んねぇし。あぁ、どうせなら菱井と一緒の方が良かった。
「天宮」
「はいっ!?」
 いきなり先輩に声かけられて、背筋が凍る。
「良介が、いつも世話になってる」
 先輩の言ってる事は俺にとって滅茶苦茶意外で、驚いた。
「あの、小野寺先輩は、俺を邪魔だとか思ったりしないんですか?」
「お前はうちの天宮のものだからな。警戒する必要は全く無い」
――寛大だ。どっか間違ってる気ぃするけど、南斗にはこの辺り見習って欲しいもんだ。
「むしろお前には感謝している。お前が俺のところへ怒鳴り込まなかったら、俺の目は覚めなかったかも知れない」
 うわ、それ俺にとっちゃかなり恥ずい思い出なんですけど。
 けど、あいつのために何か一つでも出来たこと、俺は後悔しちゃいない。
「先輩、菱井のこと大事にしてやって。あいつは俺の親友なんですから、不幸にしたら赦さないっすよ」
「――解った、約束しよう」
 そのとき、背後の方から突然笑い声がした。ここまで聞こえてくるって相当だぞ!?
「この声って菱井!?」
「あの馬鹿、何をやっている……」
 結局俺はまともにアトラクションを見ることは無かった。気付いたのは降りたあとだったけどさ――。

 

2006.08.07 21:49

【南斗と菱井】

「……何でよりによってきみと一緒なんだろうね?」
 それはこっちの台詞だ。
 北斗と仲がいいって言うただ一点だけで天宮南斗から蛇蝎のごとく(と、こないだ優が表現してた)忌み嫌われている俺としては、ホラーライドで二人きりという状況は息が詰まる。
 別に俺自身はこいつの事は嫌いじゃねーんだけどね。メチャクチャ単純で解りやすいし、いじったら面白いし。
 優や北斗に言わせると、天宮南斗が「解りやすい」と感じる時点であいつにとっては特別な存在ということらしい。

 アトラクションの方はオーソドックスなお化け屋敷に比べりゃ全然怖くねーし意外性も無い。
 なのにさっきから、隣でやたら大げさな反応を感じるんですけど。
「……ひょっとしてお前」
「なっ、何!?」
「ホラー系メチャクチャ苦手だろ」
 ちょうど雷みたいな照明の点滅が入って、半泣きで俺を睨み付ける天宮南斗の顔が見えた。
「……悪かったね」
 こいつ、こんなんで北斗に抱きつかれるの期待してたのか!?
「ぶ……ぶわははははははは!! 傑作、超傑作!」
「予め仮面被ってれば、我慢は出来るんだ」
 恨めしそうな声で天宮南斗が言う。イメージを保つことにかけちゃ天下一品のこいつらしい。
 まてよ、ってーことはやっぱり、俺には取り繕う必要なし、って認められてんだな。
「良いこと教えてやるよ。北斗はホラー、スプラッタ何でもござれだぜ」
「そ、そうなの!?」
「だからお前が怯えて甘えて抱きつきまくれ」
 そしたら北斗が可愛がってくれるかもよ、って慰めた途端、突然天井からぶらさがった血塗れ落ち武者を見て天宮南斗は絶叫した。

  

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 微妙に菱井編のネタを含む中盤。山場はやはり南斗と菱井ペア。この二人はいつもこんな感じです。精神的な余裕度は菱井のほうが上。