INTEGRAL INFINITY : extrastars

【大学生編(またの名を同棲編) その3】

2010.06.13〜2010.11.16 web拍手お礼SS

「ん……っ」
 北斗の頭頂が震えたかと思うと、身体がもぞもぞと動き出した。ああ、起きてしまう――奇妙なまでに残念と思う気持ちが俺の中で頭を擡げる。
「南、斗……今、何時?」
「多分六時を回ったんじゃないかな」
「嘘だろ、もうそんな時間かよ」
 嘘じゃないよ、と俺が言うと北斗は上半身からタオルケットをずらした。
「こんな何もしてねぇ誕生日って初めてだろ。っつぅか暑い、蒸し暑い」
 北斗は身体と腕を伸ばして、恐らく扇風機のスイッチを入れようとした。が、出来るはずがない。俺達はベッドの上にいる。
「窓開けようか?」
「とりあえずそれでいい。ところでさ、メシどうする?」
「俺は、特に思いつかないな。寧ろ食べなくても良いかも」
「そりゃあ有り得ねぇだろ。腹空くのはやだぜ俺」
 そう言って北斗は本格的に身体を起こしてしまった。ベッドから降りてこれから着る服を探し始める。
「南斗もさっさと着替えろよ」
「――わかったよ」
 俺としては、今日はもうずっとここから出ずに北斗と密着していたかった。

 二十一年前の今日、別れて産まれた日だからこそ。

 そう言う俺の機微を北斗に察しろと言うのは無理な話で、昔は受け入れられなかったその事実を最近、俺は納得できるようになった。
 だから――俺は、怖い。
「南斗」
「なに?」
「俺は、これからもずっと俺達は変わんねぇ、って思ってんだからな」
 離れられるわけねぇだろ、と北斗ははっきりと、言った。
 胸が一瞬で詰まって、今にも破裂しそうなほど嬉しくて、俺は自然と浮かんだ笑顔のまま、泣いた。

 

2010.10.31 23:57

「トリック・オア・トリート!」
――南斗が口にした瞬間、俺はオレンジと黒の見た目相当悪ぃキャンディをあいつの目の前に突き付けた。
「……って、なんかすっかり定番化してるよな、このルーチン」
「全くだね……」

 

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