俺は今日も天文部の展示に行く予定だ。幸崎先生のプラネタリウム解説、楽しみにしてっから。
そういや先生、昼ってちゃんと食ってんのかなぁ。なんだかんだ言って持ち場から離れにくそうだし。何か差し入れでも持っていこう。
――俺も、八組の屋台に行ってみよっかな。たこ焼きだったらあんまり好き嫌いとか無さそうだし。
八組のたこ焼き屋は結構繁盛していて、五分ぐらい並んで待った。
「次の方どうぞー――え、天宮?」
「天宮君はミスコンの準備よ。一組の方でしょ」
「……二つお願いします」
やべ、声、低くなった。やっぱこの屋台で買うべきじゃなかったかもしんねぇ。
「す、すいません! 少々お待ちくださーい」
暫くして渡されたたこ焼きは熱々だったけど、俺の気分はかなり冷えてしまった。
幸崎先生は昨日とほぼ同じ状況で、天文部のコーナーにいた。相変わらずここには閑古鳥が鳴いてるみたいで、先生はすぐに俺に気付いた。
「いらっしゃい、天宮君」
「先生、たこ焼き買ってきたんだけど、いる?」
「えっ、そんな、生徒が先生に気を遣わなくても良いのに」
「その様子だと今日も一人で店番なんだろ? なかなか昼も買いに行けねぇんじゃねぇかと思って。あと、プラネタリウム解説してくれる約束じゃん? そのお礼って言うか。まぁ俺の分もあるし一緒に食おうよ」
「じゃあ、お言葉に甘えていただこうかな」
俺は先生の隣まで椅子を引っ張ってって、隣で自分の分のたこ焼きを食べた。行列できてただけあって八組のたこ焼きはかなり旨い。でもなぁ……。
「天宮君、タコで舌でも火傷した?」
「もうだいぶ冷めてるじゃん。買ったとき、向こうの反応がちょっとアレだったの思い出しただけなんで」
「ひょっとして、書記の天宮君に間違えられたとか?」
「……当たり。俺って南斗のハズレだから、そう言う反応されるの慣れてるけど」
「でも、あまり気分の良い事ではないよね。君たちは双子だけど、それぞれ独立した人間で、片方がもう片方のおまけやスペアなんて事は絶対に無いんだよ」
先生はあの優しい表情でそう言いながら、俺の背中を軽く叩いた。あまり強く叩かれた訳じゃないのに、感触がずっと、残ってる。
「先生、頼みがあんだけど」
「何?」
「俺の事、天宮じゃなくて名前の方で呼んでよ。他の奴らが居ないときだけでいいからさ」
「――そんな事ならお安いご用だよ。プラネタリウムの解説役に比べれば」
「あーそうだ、それそれ! 俺、それ聴きに来たんだった」
「しまった、墓穴を掘ったか。仕方ないな、始めようか。『北斗』君、準備はまた手伝ってくれるかい?」
幸崎先生の口から俺の名前が出たとき、何故かひどく泣きそうな気分になった。
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