INTEGRAL INFINITY : polestars

『――ただいまより、第七回ミス惣稜コンテストの結果を発表いたします』

 二日目の俺のウェイター当番が終わって更衣スペースに引っ込んだ直後、全校放送が入った。ミスコンの結果は我が校生徒の最大の関心事だから、俺達もしぜん着替えの手が止まる。

『厳正なる集計の結果、ミス惣稜は二年二組・山口郁美さんに決定致しました!』

「山口副会長、結局取ったんだ……」
「え、副会長出てたのかよ。天宮知ってたの?」
「代わりに南斗が司会やる羽目になったらしいからな」
「あー、なる。でもそんなら俺ミスコン会場見に行きたかった……ちくしょう」
 久保田の中の山口副会長像が、現実とはかけ離れているのを俺は知ってるけど、夢を壊すのはやめとこう。
「授賞式はこれからだろ。走れば間に合うんじゃね?」
「そっか! サンキュー天宮!」
 久保田は凄い勢いで着替えると、ダッシュで体育館に向かっていった。慌てすぎてシャツとか凄ぇ事になってたけど、そっちは言っといたほうが良かったかもな。
「菱井ー、残り時間はどうする?」
「あー、折角だからライブ系でも見てかね? 確か、まだ何かやってたっしょ」
「じゃ、決まりな。あと、終わったら帰るだろ? カラオケボックスでも行こうぜ」
「は? 何言ってんの。後夜祭は出るよ」
「お前、踊る相手いねぇじゃん」
 菱井は客にかなり積極的に話しかけてたけど、結局努力は報われなかった。だからてっきり帰ると思ってたのに。
「だからー、後夜祭に一人で来てる子に声かけるんだよ」
……どうやら菱井はギリギリまで諦めないつもりみたいだ。その内容はどうあれ、ネバーギブアップ精神は褒め称えられても良いかもしんねぇな。

「菱井どうよ、上手くいってる?」
「……駄目だ、オトコと来てねー女子は揃いも揃ってフリーのイケメン狙いだ」
「考える事は男も女も変わんねぇよな、そりゃ」
「畜生、そろそろダンスが始まっちまうよ」
 中には友達の付き合いで仕方なく、って子もいるかも知んねぇけど、菱井が求めてんのは多分違うんだよな。そんな真剣な事じゃなくて、今夜が楽しければオッケー、みたいな同じノリの子。
 皮肉にも、そう言う子達の多くが南斗に群がっていた。あいつも今や難攻不落の王子様の一人だもんな。あいつの近くには、これまた今年の選挙をぶっちぎりで勝ち抜いた程人気がある生徒会長もいて、更に女子の集まりに拍車をかけてるみてぇだ。
 当の南斗は後夜祭の運営に忙しいらしくて、女の子達の誘いを断るのに困ってる様子が遠くからでもわかる。表情まで想像出来んのは、やっぱ同じ顔だから、かな。

 

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 生徒会長様なのに初登場で出番がこれだけ…(笑) 山口副会長に完全に喰われてますね、この作品では。いつか番外編でもやれたらな、と思います。