昔はこの学校でも後夜祭にキャンプファイアーやってたけど、やっぱ学校が町中にあるから、万が一の危険防止のために禁止になったらしい。その代わり、今では巨大なランプシェードの中に強力な照明を入れて火櫓の代わりにしている。
ランプシェードは毎年美術部が造っていて、今や惣稜祭後夜祭名物の一つだ。俺も昼間に近くで見たけど、あいつら一体どうやったらこんなの考えついて、しかも造れんだろうか。一度訊いてみたいぐらい変な形をしていた。それに、本番までの間何処に保管してるんだろうな。あれ、廊下通らないんじゃないか……?
俺を含めて踊りに加わらない連中は、だいたいグラウンドを挟んで校舎の反対側にある石段に座っている。踊ってる友達を待ってたり、単に文化祭の余韻から抜け出したくねぇから仲間と喋ってたり、ここにいる理由は色々あるんだろう。
グラウンドの上は当たり前だけど視界を遮る物が無くて、運良く晴れてる事もあって上空が良く見えた。ここら辺はおおっぴらに都会って言えないまでも田舎って訳じゃないから、見える星の数は多くない。北斗七星もこの時期だと低くて見れないしな。
それでも、後ろの段にもたれかかって天頂のあたりを眺めてると、不意に視界が人影で遮られた。
「――南斗」
「北斗、今ひとり? 菱井君は?」
「あいつ、山口副会長に無理矢理引っ張られて踊ってるよ。お前こそ仕事は?」
最近南斗の奴、菱井の事ばっかり訊いてくるな。俺が親友って言ったのがそんなに珍しかったんだろうか。変に気を遣われてるみたいで、正直ちょっと鬱陶しい。
「今は一段落ついたところ。後夜祭の終わりまでは休憩時間だよ」
南斗は俺の隣に座って、俺と同じ姿勢をとった。
「今日の夜、晴れて良かったな」
俺は南斗に星を見ていたことを悟られたくなくて、適当にそんな事を言った。
「そうだね」
「お前は踊んなくていいの?」
「北斗こそ」
「俺は興味ねぇし、それに誘ってくれる子もいねぇよ」
口に出してみると、相手が山口副会長とはいえ菱井に後れをとったのはしゃくに障るな。
「お前には大勢いるだろ? さっき見たぞ」
あぁ、と呟いた南斗の声は疲れてるように聞こえる。そりゃあれだけ女子が群がってたらな。
「俺は、山口先輩みたいにその場のノリと気分でパートナー選べないよ」
お前真面目だね、と俺は応えるつもりだったけど、続いた南斗の言葉に何も言えなくなった。
「――俺、踊るなら本当に好きな子とがいい。でも、絶対に無理だから」
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