――妙な構図だ。
俺を真ん中に挟んで、南斗と菱井が話している。内容は当然、中間についてだけど、一応真面目な内容なのに菱井の視線はどっか不敵だし、南斗は南斗で含むところがありそうな声をしてる。
「そう言えば、俺が教えるって言ったけど、北斗は菱井君と勉強するって言ったんだよね。二人でやったらはかどる?」
「図書室追い出されることは無かったから、それなりに真面目に勉強してたと思うよ?」
こいつらひょっとしなくても凄ぇ仲悪い? 文化祭実行委員会で何があったんだ……?
「でも、北斗はあんたに化学教えてもらったって思ってた」
「化学? ――北斗、今回化学良かったの?」
「まぁ、手応えあった、っつぅか」
「さっきこいつ、自己採点して俺に自慢しようって言ってたんだぜ」
「菱井っ!」
俺は菱井を肘で思い切り突いた。南斗に俺の成績の話振られるのは嫌すぎる。遅かれ早かれ知られるんだけど、気分の問題だ。
「ひょっとして、これからそれをやるつもりだった?」
「ああ、ふ・た・り、でね」
「……ふぅん」
何だろう、この異様なまでの居心地の悪さ。
「北斗」
「な、何」
「自転車で帰ろう」
突然南斗は俺から鞄を奪い取って自転車の籠に突っ込んだ。
「おい何すんだよ」
「もう暗くなってきたし」
そんな今更、俺は女じゃねぇんだから夜道を歩くなって言われても困る。
「俺はこれから菱井とっ」
「いいよ、今日たっぷり遊んだじゃん。俺も帰るよ」
予想外にも菱井はあっさり俺を南斗に引き渡してしまった。さっきまでの様子からして、南斗と張り合ってくれそうだったのに。
「北斗、後ろ」
俺は観念して荷台にまたがった。最初は立とうと思ったのに、南斗に「危ないから」と無理矢理座らされた。
「さようなら、菱井君」
「じゃあな。また教室でな」
「おう」
俺と菱井の挨拶が終わりきる前に南斗は自転車を発進させた。いきなりだったので俺は南斗の腰をきつく抱きしめる羽目になる。
「重い荷物乗っけんだから転倒すんなよーっ!」
「誰が重い荷物だっ!!」
俺の耳には今、南斗が漕ぐ自転車の音だけが響いている。耳をなぶる風はもう随分冷たくなったと思う。
「北斗、寄り道しよう」
「はぁ? お前、さっさと帰りたかったんじゃねぇの?」
「気が変わった!」
自転車は狭い路地を器用にUターンする。こいつって随分自転車の操り方が荒いな、と思ってると、南斗の背中に思い切り額をぶつけてしまった。
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