俺……中学上がったら南斗に何にも勝てなくなってて、親も学校の連中も、告白してきた女の子もみんな南斗ばかり見て、俺優秀じゃないから仕方ねぇ、って諦めてたけど、昔ガキの争いで「北にしか北極星は無い」って言ってあいつに勝ったってことが、くだらなくても一つでもそんなのが俺にある、ってことが支えだったんだ。 でも天文部には南斗が入ってて、あの部は自分のだ、入部なんて許さねぇって言われて押さえつけられて……幸崎先生は南斗の事知ってて、それはあいつが書記だからじゃなくて天文部員だからで、俺全然そんなこと知らなくてさ。俺が文化祭で天文部見に行ったこと内緒にして、って頼むずっと前から南斗は先生に自分のこと俺に言うなって口止めしてたんだよきっと。先生は俺との約束も守ってくれたけど、俺と南斗を比べられるのは嫌だろうって言ってくれたけど、じゃあ自分は? って今までの先生の言葉全部疑っちまって、良い先生なのにそう思っちまう俺が嫌で――。 家に速攻帰って、南斗の本棚見たら全部天文の本だったんだ。参考書や赤本まであって、あいつめちゃくちゃ真剣に、将来天文学やろうって考えてたのが解って、それが一番ショックだったんだよ。 興奮で声が裏返って上手く喋れなかったけど、菱井は俺の話が終わるまで横やりの一つも入れずに黙って聞いてくれた。辛かったな、とだけ言ってくれた。 「北斗。携帯鳴ってる」
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オンフックとオフフックをよく混同します。昔ながらの、受話器と本体がコードで繋がれてるやつをイメージすれば理解できますが、携帯だとねぇ……。 |