俺が鎌仲に呼び出された理由について、ラッキーなことに誰も注目なんかしちゃいなかった。
勿論、あの場にいた久保田達には追求されたけど、「試験直前に出したレポートに難癖つけられた」で簡単にごまかせた。実際、「お前のレポートは何となく気に入らない」って理由で再提出させられた奴が別のクラスにいたらしいしな。俺の災難の元凶は鎌仲なのに、変なところで感謝してしまう。
ただし、菱井だけはいつの間にか事の真相を知っていた。あの場に生徒会役員が二人もいたんだ、間違いなく小野寺会長経由だろう。
流石に菱井からは、あの時俺が南斗に取った態度はヤバイと指摘された。
「俺が天宮南斗の立場だったらキレてもおかしくないぞ、普通」
んな事は自分が一番よく解ってて、けど気持ちはどうすることも出来ねぇ。むしろ、あんな事があったせいで余計に南斗を避けた。
俺らの関係はもう壊れていて、中学入学より前には今更戻せない。
鎌仲とのことの代わりに学校の連中の噂になったのは、俺と南斗の不仲説・ライバル説だ。
「なぁ、一組の天宮だろ。天宮って書記に対抗心燃やしてるわけ?」
事実、あの日の翌日だけでも、こんな風に訊いてくる他のクラスのチャレンジャーが五人ぐらい出現した。
「別に、あいつの事なんて関係ねぇよ」
俺は決まってそう返事すんだけど、ウザくて仕方ねぇから機嫌悪さが顔に出すぎて、緑川から「天宮君、そんな表情じゃあ被写体として失格じゃあないかい」とまた変なことを言われる羽目になった。
きっと南斗の方も似たような状況のはずで、俺らについて色々詮索されるのを不愉快に思ってるかもしんねぇ。
でもあいつの態度は、いつもとと全然変わんなかった。変わんなすぎていっそ不気味かも、と俺が思ってしまうぐらいに。
終業式が来るまでは、案外あっという間だった。
「――結局、クリスマスイブは野郎どもと過ごすんだよな」
いつものように校門で合流した菱井はそんな事言ってるけど、別にカノジョが出来なかったことを残念がってるわけじゃねぇ。今日集まる面子は普段から仲良い奴らばっかだし、なんだかんだ言って俺らは今日のパーティっつぅ名目の馬鹿騒ぎ、楽しみにしてんだ。
今晩の予定について、俺は家族に何も言ってこなかった。
そりゃ、着替えるために一度は家に帰るけど、クリスマスは家族で、なんて年齢とっくに過ぎてる。俺は普通に菱井達と遊ぶだけで、後ろめたい事なんてこれっぽっちももねぇ。だから、親にあまり干渉されたくなかった。
俺らは雑談しながら昇降口に入り、それぞれの下駄箱を開ける。
上履きの上に、ピンクの封筒が乗っかっていた。
「おい、北斗どーした? ――って、それ!?」
三十秒ぐらい息が止まったかと思った。封筒に書かれてた宛名は「天宮北斗様」――正真正銘、生まれて初めて見る、本物の俺宛のラブレターだった。
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