目覚ましもかけてねぇのに、六時頃勝手に目が覚めた。
上半身を起こして自分の格好確認して、俺は自分自身に凄ぇ感謝した。よくニュースとかで言われてる「着衣の乱れあり」って多分、今の俺の状態だと思う。母さんに見つかりでもしたら、ヤバイどころの話じゃねぇかも。
「あー、何か喉、痛ぇ……」
呼吸すると喉の奥がぴりぴりする。上半身殆どハダカで、しかも暖房効いてない部屋で布団被らず寝てたからだろう。俺は慌ててベッドに上がって毛布と掛け布団に潜り込んだ。
――次に意識を取り戻した時にゃ体調は更に悪化したみてぇで、全身凄ぇだるく感じた。
「北斗。帰ってきてるの?」
ドアを叩く音。母さんだ。けど喉痛くて声出すのも面倒だった。
ベッドん中で俺は唸るだけだったけど、親の直感なんだろうか、母さんはドアを開けて部屋を覗き込んできた。俺もそっちの方を向く。母さんの顔、ちゃんと見るの久しぶりかもしんない。
起きあがらない俺を不審に思ったのか、母さんは部屋に入ってきた。
「ちょっと! 目が潤んでない?」
母さんの手が俺の額に当てられた。何か、ひんやりする……。
「熱があるみたい。どうしたの、風邪引いたの? とにかく体温計持ってくるわ」
母さんがいない隙に自分の両手を見る。
大きさも爪の形も、何もかも南斗と全く同じ。
「うわ、やば……ッ」
俺はやっと、あの時南斗にされたことをホントの意味で認識した。
今、俺の身体が震えてるのはきっと寒気のせいだけじゃない。
俺、今日、どんな顔してあいつと会えば良いんだろう。
体温計ったら母さんの言うとおり、やっぱり熱があった。
「朝ご飯、北斗のぶんも用意してあったけど、食べれそう?」
「……食欲ねぇ」
「そう。とにかく薬を飲んで、あとちゃんとパジャマに着替えなさい」
あ。俺、昨日の服のまま寝てたのか。言われて初めて気付いた。
薬を取りに部屋から出て行こうとする母さんを、俺は呼び止める。
「母さん。南斗、は?」
「あの子は今日から部活の合宿ですって。もう出かけたわよ」
合宿……?
『先生。冬は合宿どうしますか?』
『うーん、クリスマスと大晦日の間ぐらいに一泊がせいぜいかな』
……そっか。確かにあの時、南斗は幸崎先生とそんな話、してたな。
じゃあ、あいつが家に帰ってくんのは遅くても明日の夜ぐらいか。
ほっとしたようなしないような――よく、解んねぇ気持ちだった。
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