具合悪いの自覚した次の日が、だいたい発熱のピークだっつぅ気がする。
風邪引いた次の日、俺は急に上がった熱のせいでベッドの上から殆ど起きあがれなかった。身体中が寝汗でべたべたするし、何か筋肉とか痛い。仕方ねぇからバイト先には、嗄れた声で休みの連絡を入れた。
熱と薬で頭がぼうっとするせいで、モノを上手く考えられねぇ状態だった。
あー、どうしよ。俺、あんま時間ねぇってのに。
とにかく寝たら夢のお告げでもあるか? ってヤケになってみたけど、夢は全然見れなくて、気がついたら既に夜だった。
身体は少し楽になってたから、ジャンパー羽織って一階に行くと即座に母さんに見つかった。
「北斗。駄目じゃない、寝てなきゃ」
「なんか食うもんねぇかな、って思って」
寝てばっかでも腹減るのって不便だよなぁ。昼メシは寝てて食えなかったし。食欲あるのは回復してきてる証拠なのかもしんねぇけど。
「もうお粥以外のものは食べられそう?」
「ってか飽きたよ、雑炊も」
「良かった。今日の晩ご飯、念のためにシチューにしたのよ。用意するから一旦部屋に戻ってなさい」
「ここで待ってていい? どうせすぐじゃん」
「……仕方ないわね。母さん達の部屋から毛布持ってきてソファの上で被ってなさい」
「へーい」
俺は言われたとおりに両親の寝室に毛布を取りに行った。後ろから電話が鳴るのが聞こえる。まぁ、また菱井ってこたぁねぇよな。時間的に、父さんが晩メシいらねぇ、ってやつかも。
「はい、天宮です――あら、南斗?」
リビングに入ろうとした俺の足が止まる。
「あなたの方は身体壊してない? 北斗は風邪を引いちゃってね――」
母さんの口から俺の名前が出て、思わず慌ててソファに飛び込み毛布を被る。
俺の風邪の事、南斗はどう思ったんだろう。
よくよく考えてみりゃあ、半分ぐらいはあいつのせいだよな、これ。半裸で寒い部屋に一晩放置されたらそりゃ風邪引くよな……。終わった後、その場で寝ちまった俺も俺だけど。
情けねぇ気分になって、俺は毛布を頭が隠れるぐらいまで引っ張り上げた。
「えっ、それはどういう事!? ――駄目よ、ご迷惑をかけるだけじゃない! とにかく帰ってらっしゃい――……」
母さんが電話口で何か揉めてる。でも毛布越しだから内容はよく判んねぇ……。
母さんの電話は結構長くて、いつの間にか俺はまた眠りの世界に入っちまったけど、今度はシチューの匂いで簡単に起きれた。
「あ、うまそー」
大きめに切ったニンジンやジャガイモ、ブロッコリーがごろごろ入ったクリームシチューはめちゃめちゃ美味そうだ。いただきます、なんて言うのもそこそこにスプーンを皿に突っ込んでると、母さんが向かいの椅子に座って溜息をついた。
「南斗がね、合宿が終わったらそのままお世話になっている先の手伝いに残るんですって。冬休みいっぱいは帰ってこないそうよ」
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