お粥に飽きた、っつぅ先入観からか、一昨日食った七草はあんま美味く感じらんなかった。
普通は七草食った次の日から学校、って感じだけど、今年は八日が日曜だから今日の第二月曜、つまり成人の日まで挟んで冬休みが二日長い。去年の俺だったら多分、素直に喜んでたんだろうけど、今回だけは余計でウザく感じていた。
学校が始まる前日に南斗が帰ってくる。正確な時間は言われなかったらしいけど、母さんはそう言っていた。そりゃ、今日帰ってこなかったら問題だろうけど。
「北斗。朝からずっとリビングにいるけど、冬休みの宿題終わってるの?」
「高校はそんなん殆ど出てねぇよ」
明日はどうせ始業式だけで終わるから、持ってくもんも殆ど無い。
俺はリビングでひたすらテレビを見続けた。ワイドショーは成人式に関するニュースで盛り上がっている。
それでも何時間も経つと流石に飽きてくる。けど、部屋にいる間に南斗が帰ってきたら、って考えるとどうしても二階に上がれなかった。
親には理由言わなかったけど、ガキっぽい行動だから簡単に想像ついたらしく父さんに言われた。
「南斗を待ってるのか?」
「うん、まぁ」
「――そう、か」
父さんはくすぐったそうな表情してて、きっと俺の目的とは全然違う想像してるんだろう。
何か切なくなってきた。
俺が南斗を待ってるのは、父さん達が期待してるように「普通の家族」に丸く収まるためじゃねぇ。結果的に見た目はそうなるかもしんねぇけど、俺がどんな結論出すにしろ、俺らはもう、小学校の頃と同じ状態には戻れねぇだろう。
ごめん、父さん。それに母さんも。
絶対に言えねぇけど、何だか心の中だけでも謝っときたくなった。
晩メシを食った後、俺は強烈な睡魔に襲われた。腕や頬をつねったり、リビング中をうろついて母さんに怒られたりしたけど、一度ソファに座った途端、気付かないうちに意識が落ちていた。
目が覚めた時、既にリビングには人の気配が全く無かった。照明も最小限にまで落とされている。両親はとっくに寝ちまった後だろう。
「……しまった、南斗は」
未だに覚醒しきってねぇ、ふらついた身体を強引に起こす。寝てる間に掛けられた毛布は床に落としたままにして、俺は玄関先に向かった。
南斗の靴はそこにあった。綺麗に揃えられてるあたりが南斗らしい。
結局あれか? 俺の努力って全部無駄だったわけ?
脱力してるわけにもいかねぇし、風呂にも入んなきゃなんないから俺は二階に上がった。
南斗の部屋は、人が動いてる気配がする。あいつ、まだ起きてんのかな。だったら、親も寝てるし好都合だ。
「南斗。起きてる?」
ドアをノックする――けど、反応が全然ねぇ。
「おい、南斗。南斗ってば!」
何度ドアを叩いても呼びかけても、南斗は部屋から出てくるどころか一言の返事すらしなかった。
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