INTEGRAL INFINITY : polestars

 夜中に騒ぐ訳にゃいかなかったから、結局この場で南斗と話すのは諦めるしかなかった。
 けど、朝になれば絶対にかち合う。そう思って、俺は目覚ましのアラーム時刻を南斗がだいたい起きる時間にセットし直した。

「え、もう学校行った!?」
「そうなのよ。帰ってきてすぐで疲れているのに、私より早く起きてるの」
――やられた。この時は、そう思った。
 出し抜かれて悔しい、っつぅ気持ちが、だんだん喉の奥に溜まっていく。
 しかもこんな時に母さんは「結局昨日は南斗と話せなかったわね」なんて言うから、重苦しさは更に酷くなった。
「ごめん母さん。朝メシ残す」
「食欲無いの? まさか去年の風邪が今頃になってぶり返したんじゃないでしょうね?」
「そんなんじゃねぇって。単なる連休疲れだよ」
 強引に誤魔化して、結局俺はいつも通りの時間に一人で家を出た。

 菱井とは、いつも通り校門の前で会った。
「おはよー北斗――って、何、そのすげー疲れた顔」
「やっぱ顔に出てるか……」
「あ。また溜息吐いた」
 あいつと話したのか、と菱井は訊いてきた。
「いや、まだ全力で逃げ切られてる」
「逃げ、って、まさか一度も顔合わせてねーとか?」
「そのまさかだよ。くそ、あん時寝ちまったのが敗因だった」
 菱井は呆れた顔で、南斗は俺より往生際が悪ぃと断言した。
「北斗だってあのときゃ流石に丸一日ぐらいで観念したのに。合わせる顔無い、ってのは解るけど、ここまで来るとバカだよなー」
 一年の教室がある階にあがると、菱井は突然俺の腕を掴んだ。
「このまま八組行くぞ!」
「はぁ!?」
「天宮南斗が先に登校してんなら、どこに隠れてたってこの時間にゃ教室戻ってくるだろ」
「ちょっ、袖引っ張んなって!」
 菱井に引き摺られるようにして廊下歩いてると、ホントに偶然、廊下の反対側から凄ぇ久しぶりの、けど見慣れた顔が近づいてきた。菱井が嬉しそうに叫ぶ。
「ラッキー、我ながらグッドタイミング!」

 心臓が早く動いてる音が自分でもはっきり聞こえる。
 やべぇ、緊張しすぎて何言えばいいか判んねぇ、俺。
「あ……なん、と」

 気ぃ抜くと変になりそうな表情を無理矢理押さえつけて、俺は南斗の顔を見た。
 あいつは一瞬、辛そうな顔をする。
 けどすぐにそれを消して、凄ぇ冷たい感じの態度で視線外して――俺達を無視して教室の中に入っていった。

 

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 朝食を食べるのが偶に面倒になることがあります。無理矢理でも食べないと昼近くに耐えられなくなるのですが。我が家では専ら洋風の朝食ですが、前日の夜が炊き込みご飯等だったりすると、サラダやヨーグルトに炊き込みご飯、という不思議なことになります。