ずっと顔を伏せてたせいで、担任の君島がホームルーム始めたのに俺は全然気付かなかった。
「ほら始業式行くよ!」
「痛ぇっ!!」
出席簿の角で容赦なく頭を叩かれ、跳ね起きる。クラスの連中がそれを見て笑った。
「天宮ぁ、冬休みボケか? 生あくびしすぎで顔がぐちゃぐちゃだよ」
みっともないから体育館入る前までにちゃんと拭いとけ、って君島に言われた。指で頬を触ってみると確かに、そこは濡れていた。
元から校長の話とかは真面目に聞く気なんてねぇけど、ぼうっと出来る始業式の時間は凄ぇ有り難かった。
生徒会からも何か連絡があって、小野寺会長が何か喋ってたけど、こっちも内容は全然頭に入らなかった。ただ、表に出てきたのが会長だけで良かった、って漠然と思ったぐれぇだ。
始業式が終わって体育館の外に出ちまえば、生徒はごちゃごちゃになる。
やっぱ時間的に目撃者が多かったのか、教室まで戻る間に朝の噂が広まったらしい。
「朝、また書記の天宮と揉めたんだって?」
帰る段階になって、久保田達に訊かれた。
「今度はお前の方が何かやらかした、って事になってるぞ」
いや、俺菱井に引っ張られて八組の前まで行っただけなんですけど。
「お前らって喧嘩多いんだなぁ。改めてそう思った」
「元々仲が良さそうじゃ無かったじゃん。入学式の時忘れたのか」
「あぁ、自己紹介の時の。あれは凄かったねぇ」
久保田達は単純な理由で納得しそうだけど、こいつらにホントの事は言えねぇよな。
「――なぁ、俺、用事あっからお前ら先に帰ってて」
「マジ? よりによって今日?」
それまで黙ってた菱井も、俺の目を見た。一緒に行こうか、って視線が言ってる。
俺も視線で、大丈夫だと返した。
「ああ。一人で行かねぇと意味ねぇから」
職員室入ったのは、鎌仲に呼び出された時以来だ。やっぱ休み明け初日だからか、先公達もどっか気合いが抜けてるように見える。
俺は真っ直ぐに理科教師の机が集まってる島に向かった。
「幸崎先生、ヒマ?」
「北斗君!?」
後ろから声をかけたせいか、幸崎先生は持っていた書類を机の上に落とした。弾みで飛んだ紙を俺が拾う。
「はい、落ちた奴」
「有り難う――ところで、何か僕に用かい?」
「先生と昼メシ食いに来た。この時間に職員室いるんじゃ、まだ食って無いっすよね?」
「今から食堂に行こうと思っていたところだよ」
ひょっとして出前とか取ってたりすんのかな、って思ってたから、とりあえずほっとする。
「俺も一緒に行ってもいい?」
「構わないよ。ただ、今日は土曜と同じでメニューが少ないと思うけど、それでも北斗君が良いなら」
「サンキュー。じゃあ先生、早く行こうぜ」
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