土曜や今日みたいに学校が午前で終わる日は、利用する生徒が少ないせいで学食で売られるものは麺類ばっか、って状態になる。
俺と先生はラーメンを頼んで、殆ど人がいない学食のど真ん中に陣取った。
「学食のラーメンってそんな美味いもんじゃないよね」
俺が目的を果たせなくても、それこそ学校の近くで出前取ったほうが幸崎先生には良かったんじゃねぇか、なんて思う。
「まぁね。でも、ラーメン屋より随分安い。一食300円もかからないなら多少不味くても僕はこっちを選ぶよ」
「大人なのに貧乏臭いなぁ、先生って」
「一年目の教師の給料なんて、北斗君が思っている程高くないんだよ」
それに自分が学生だった頃の癖が抜けない、って先生は笑った。大学でも毎日のように安い麺類ばかり食っていたらしい。
「先生って一人暮らし?」
「そうだよ」
「まさか家でもこういうのばっかり食ってんの? そのうち身体壊すよ」
「最初はまともに自炊してたけどね。だんだん面倒になってきて」
先生の生活の駄目なとこ、初めて知った。俺も中学の時の家庭科の成績からして、被服はともかく調理が全然駄目だから、一人暮らししたら似たような状態になりそうだ。
「――それで、北斗君は何か悩みがあるのかい?」
お互い麺を殆ど食い終わった頃になって、先生は言った。
「悩みだったら同じクラスのダチに相談する。ただ、確かめたい事あったから」
もう無駄なことかもしんねぇけど、それでも自分の中ではっきりとケリをつけときたかった。
「それは僕とこうして昼を食べることで判ること?」
「ん」
俺はどんぶりからスープをすすりながら頷いた。
先生とこうやって話せんのは、やっぱ今でも楽しいって思う。
けど、あの事件が起きる前とは感じ方が微妙に違った。今はもっと――悪い言い方すれば、冷静になってる。
「先生。天文部の合宿ってどうだった?」
「……君やご家族には、突然のことでご迷惑をおかけしてしまったね」
先生は流石に、俺が本当に知りたいって思ってたとこを解っていた。
「いや、迷惑かけたのは南斗じゃん? どう考えても」
「二人はよく手伝ってくれたよ。普段は兄夫婦だけでやっているから、年末年始に楽が出来た、って喜んでいた」
ちょっと待て。二人、って何だ?
俺が変な顔をしたの見て、先生は知らなかったのかい、って訊いてきた。
「南斗君が残る、って言い出したとき、酒谷君が自分も一緒にって言ったんだよ」
――酒谷が?
同じ生徒会だから仲は良いんだろうって思ってたけど、まさかそこまでだったなんて、俺、全然知らなかった。
「じゃあ人多すぎて、やっぱ邪魔だったんじゃねぇの?」
「兄は賑やかなのが大好きだから」
天文部で居残った奴は、先生と南斗だけじゃなかった、って知って。
けど、ほっとするどころか余計面白くねぇ、って感じてる自分に俺は気付いた。
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