INTEGRAL INFINITY : polestars

「確かにクリスマスパーティのとき、天宮が告白された、って話は出たけど」
「まぁ、切り出したのは緑川だったな。天宮は黙ってるつもりみてーだったし」
「けどさぁ、あれって断った、って話だったよな。あのパーティ、カノジョいない奴限定だったし」
「うんうん。それに、俺はこのこと他の奴らに言ってないぜ。だいたい正月挟んだら頭から抜けてるって」
「俺も俺も」

 あの日パーティに参加した連中全員から、誰も俺と奈良さんとの話を広めてねぇって証言は取れた。
「でも緑川君、本当に他の人に言ったんだね……」
 奈良さんは半泣き顔で緑川を睨んだ。
「でも確かにあたしら、そんな噂聞いたんだけどなぁ」
 外野からは、未だ納得いかねぇ、って感じの発言が次々に飛び出した。
 そもそも「付き合ってる」っつぅ誤情報が入ってる時点で、緑川ルートはありえねぇ。他に奈良さんの告白の事知ってんのは――。

「――南斗だ」

「へ? 書記の天宮?」
「八組の天宮君が!?」
「あいつはあの現場、生徒会室から見たって言ってた。だから絶対、南斗しかいねぇ」
 そういえばあの夜は、結局南斗の誤解を解かずに終わったんだ。次の日から冬休み終わる直前まで俺と南斗の接触は一切無かったから、南斗が未だに俺が奈良さんの告白をオッケーした、って思っててもおかしくねぇ。
 だから、南斗は――。
「奈良さん。ほんっと、ごめんな。凄ぇ嫌な思いさせちまって」
「そんな、天宮君は悪くないよ……」
「南斗のバカには俺から言っとくから。これから噂について訊かれたら、あー、俺、否定しといたほうがいいんだよな?」
 あんまハッキリ言ったら、ただでさえ公開処刑状態の奈良さんが更に傷つくかも、って思って一応訊いてみた。
「やっぱりやさしいなぁ、天宮君……ちゃんと否定して貰わないと、また諦められなくなるから」
 無理に微笑んだ奈良さんを見て、俺はホントに申し訳ねぇ気持ちでいっぱいになった。
 俺ん中では奈良さんに告白されたことより、その後南斗にされたことの方がめちゃくちゃ大きくて。
 今も、やっと南斗と話す口実が出来た事をどっかで喜んでる。

 夜、メシ食った後に自分の部屋に戻ろうとする南斗を、俺は追いかけた。
「待てよ南斗」
 ドアの向こう側に滑り込まれる直前、俺は南斗の手首を捕まえた。
「……っ!」
 血相変えた南斗は俺を振り解こうとする。逃げられないよう右手に思い切り力入れながら俺は南斗に訊いた。
「お前、奈良さんの事誰かに話した?」
「え」
 多分、南斗にゃ予想外の質問だったんだろう。抵抗が止まった。
「奈良さん――ああ、クラスの子に、北斗に今付き合ってる人がいるかどうか訊かれたから」
「やっぱりな。っつぅか俺、あの日告白断ったから。出かけてたのは、同じクラスの久保田って奴の家でクラスの男連中とパーティやる約束してたからだよ」
 俺はまだ、南斗の手首を掴んでいる。
 何か震えてる感じがすんのは、こいつが動揺してるからなんだろうか。

 

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――北斗が言い訳する前に実力行使に及ばれましたし。