INTEGRAL INFINITY : polestars

 放課後、俺は菱井に昨日からあった事を全部話した。
「――で、それが北斗の出した結論なんだな?」
「結局それが一番自然っつぅか、他に道なんて無ぇだろ。大体、向こうもそのつもりなんだし」
 菱井はそうか、とだけ呟いて、そのまま黙った。
「まぁ、文化祭の前と大して変わんねぇ状態になるわけだし………暫くはあの事思い出すかもしんねぇけど、そのうち嫌でも慣れるだろ、きっと」
「北斗は自信、あんの?」
「今朝、久しぶりに南斗の目ぇちゃんと見たけど……勝手にどっか行かれたり、二人になんのを露骨に避けられたり視線逸らされたりするより、気分はずっと楽だったよ」

 ちゃんとした兄弟にさえなれれば、ずっと一緒にいられる。
 もう、俺一人だけ取り残されねぇで済む――あんな思いだけは二度と、したくねぇ。

 こっちが気合い入れてるからか、南斗と「今までどおり」に接するのは、思ったより照れくさかった。
 菱井に言ったとおり、学校じゃこっちから積極的に関わることなんて今更しねぇし、俺のバイトや南斗の生徒会もあって、顔あわせる機会はそんなに無い。
 だからなのか、顔にゃ絶対出すわけいかねぇけど、不意に目があった時なんかは妙に嬉しさを感じたりした。

「なーぁー、天宮」
 体育の時間、長距離走が終わってぐったりしてるところに橘が話しかけてきた。
「何だよ橘」
「そういやさぁ、最近の書記の天宮の噂、お前知ってた?」
 南斗の噂なんて学校にゃ沢山ありすぎて、俺はとっくの昔にどれがどれだか認識するのをやめていた。勿論、俺がらみのモノに関しちゃ別だけど、今んとこ奈良さんとの噂も含めて、どれも沈静化している。
「何か毎日のように昼休みと放課後、八組の担任から職員室に呼び出し食らってるらしいんだよ、あの優等生が」
 南斗が呼び出し……確かに、あいつにゃそういうマイナスイメージが全然無くて、状況の想像が付かねぇ。
「呼び出しの内容に関しちゃ、噂にゃ全然情報無くってさぁ。お前なら家族だから何か知らないかと」
「知ってるも何も、俺だってお前から聞いたのが初耳だ」
 それって生徒会関係なんじゃないの、と横で俺らの会話を聞いてた久保田が口を挟んでくる。
「来週の生徒総会の議題がらみで、何かでっかい問題あるとか」
「だったら書記の天宮より役職が上の、小野寺会長とか山口副会長が先に出てくるんじゃないの?」
 この場に菱井がいれば話は早いんだけどな。出席番号が後半のあいつは今、緑川と一緒に学校の敷地の外周を走ってる真っ最中だ。
 あ、どっちにしろ橘たちがいる前じゃあ小野寺会長の話は禁句だったな。まぁ、後で確かめとくか。

 

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 冬の体育の授業といえばマラソンのつらさばかり思い出されます; 筆者の通っていた高校にもマラソン大会は存在しましたが、急勾配のコースの恐ろしさより、出掛けに烏に糞を引っかけられた悲しさの方ばかり記憶しています……。