「生徒会の仕事に揉め事? 俺はそんなこと聞いてねーよ」
「やっぱそうか……じゃあ、何が原因なんだろうな」
「おい北斗。俺、そもそも話が見えねーんだけど」
俺は菱井に、体育の授業中に橘から聞いた事を話した。
「天宮南斗が呼び出し……別にあいつ、突然素行が悪くなったわけじゃねーんだろ?」
「俺が見る限りじゃ、今でも南斗の態度は一年の王子様だ」
うわ懐かしい表現、なんて言いながら菱井は笑った。
「じゃあ、あと考えられんのは進路関係ぐらいだなー、天宮南斗の頭だと」
「俺ら一年だぞ。理系コース行くか文系コース行くかぐらいしか選択肢無ぇじゃん」
うちの学校じゃ、志望校タイプによる本格的なクラス分けがあるのは三年生になってからだ。
「そうだよな、あの天宮南斗がうっかり三流私大系のコース選んで担任大慌てー、ってハナシなわきゃねーよな」
「あいつは――地学やる気だから、理系志望だろ」
「顔曇ってるぞ、北斗」
「悪ぃ」
南斗がうちの学校に天文部を創った事、俺を排除しようとした事は、未だに俺にとっちゃ解んねぇところが多いブラックボックスだった。けど、今となってはもうあいつに訊く事なんて出来ねぇから、ずっと謎のままなんだろう。
「菱井も理系だったよな。科目は何取った?」
「物理生物。お前も結局、理系の物理地学だろ」
――北極星のことを思うと今でも胸が熱くなる。北にあって南には無い、俺にとっての特別な星。
南斗には情熱とか色々負けてるかもしんねぇし、色々心ん中で燻ってるけど、俺はやっぱり星が好きだ。大学でそういう勉強出来たら、って思ってる。
「理系は多分、割合的に物理化学と化学生物が一クラスずつとして……物理地学と物理生物なら、高確率で二年も北斗と一緒のクラスだな」
「解んねぇぞ、俺と南斗は同じクラスにゃなれねぇから」
お前と南斗がクラスメイトになるかもしれねぇな、って言ってやると、菱井は「嫌だ、それだけは!」と世界の終わりが来たみてぇな顔で叫んだ。
「やっべぇ、もうこんな時間かよ」
玄関のドアを開ける直前、携帯の時計表示を確認して俺は溜息を吐いた。ついでに腹からも何か音が聞こえる気がする。
俺の次のシフトの奴が電車事故があったとやらで来るのが遅れて、結局俺が穴を埋める羽目になったせいだ。
玄関先には父さんの革靴が既に並んでいる。帰りは先を越されたらしい。
一階には明かりがついてるのにやたら静かで、何となく俺も物音立てないようにリビングまで向かった。
入る前に覗いてみると、両親と南斗が向かい合って座っていた。ちょうど年越し蕎麦食った時の、俺との話し合いみたいな感じだ。
違っているのは、背筋を伸ばして真剣そうなのが南斗の方だってとこだ。
「父さん、母さん――俺、樫ヶ谷学院に編入したい」
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