「それでも、俺はお前が良いっつってんだよ。っつぅか、男だったらそんぐらい普通なんじゃね?」
俺はまぁ、まだなんだけど。自覚したの昨日だし。
「でも、でも――」
南斗の腕は俺の背中を掴もうとして、何度も躊躇う。
「俺、もう二度と北斗をあんな風に泣かせたくない……」
「あーっ、もう! お前まだそんな事言ってんのかよ!」
俺はいったん南斗から身体を引き、あいつの頬に強烈な平手打ちを食らわせた。
ホントはグーパンが良かったけど、ちょっと間合い足りなかったからな。
「ほ、北斗?」
「今の一発でチャラにしてやるから! これ以上グダグダ抜かすんじゃねぇぞ。全部却下だ却下」
わざとらしくニヤリと笑ってやる。
「二度とこっちが脅えるような真似しねぇこと。ついでに一生責任取ること」
そう突きつけた一瞬後――やっと、南斗から抱きしめられた。
「良いの? 本当に良いの?」
俺の肩に顔を埋めて震えてる南斗の背中を、俺は宥めるように撫でた。
何だろ、凄ぇ胸ん中満たされてる、って感じ。
こういうのが「愛しい」って気持ちなのかもしんねぇな。
「俺もたいがい鈍くて我侭でひねくれてたけどさぁ、お前も相当、思い込み激しくて頑固で臆病だったよなぁ」
俺の言葉に南斗が顔を上げた。
「逃げ回る王子様なんて普通いねぇよ。俺じゃなきゃとっくに見捨ててたぜ?」
そう言って、目の前の唇に軽くキスしてやる。
離れた俺の唇はすぐに南斗に奪い返される。俺からのより全然深くて激しいキス。呼吸全部を奪われてるようで頭ん中真っ白になってくみてぇで――けど、前に無理矢理されたときなんかとは全然違う。この苦しさがたまんねぇ。
「――っ、けはっ」
慣れてねぇせいか息継ぎが上手くいかなくて、また唾液でむせて中断になる。
「北斗、大丈夫?」
「っ、は……へ、平気。けど、俺こういう事、やっぱお前とじゃなきゃ出来ない、かも」
――いや、出来ない、とかそういう可能不可能の問題とかじゃなくて、南斗以外の奴とはしたくねぇんだ、と思った。
南斗とだったら何でもしたい。キスも、あいつが望むその先も。
「南斗。好き――すっげぇ好き」
「俺も好き。北斗がいてくれるなら、それだけでいい。もう馬鹿な真似なんてしない」
今日三回目のキスはどっちが仕掛けたとかそういうの関係無くて、お互い食らいつくように唇や舌を吸い上げたり舐めたりしてるうちに、時間の経過とか何もかも判んなくなった。
いつの間にか、背中がべったり地面にくっついてた事すらも。
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