菱井としてはずっと黙っているつもりだったが、行きがかり上仕方が無くなり、自分に対する南斗の態度を北斗に全て暴露した。 「北斗、言うのが辛いんだったら無理すんな。何が起きたか俺にもだいたい想像つくから」 「お前と別れて家に帰ったら俺の部屋に南斗がいて、奈良さんに告白されたの見てた、って言ってきて……いや、朝に奈良さんが手紙入れてたとこも見てたっつってたけど、あいつは俺が告白オーケーしたって思ってて、そんで俺が誰にも昨日の予定言わなかったから南斗は俺が彼女とデートしたって勘違いしてて、否定する前にあっちが切れて押し倒された。お前の言うとおり、あいつ笑ってたんだ。凄ぇ怖かった。だって笑顔で人のことヤるって言うんだぜ……」 菱井は、北斗の言葉をひとことも漏らさないよう、真剣に耳を傾けた。そうする事で北斗の身体の僅かな震えが止まるよう願いながら。 「南斗がキスしてきて、服とか脱がされかけて、俺、触られておかしくなりそうで怖くて、助けて欲しくてお前とか先生とか、でも気がついたら南斗を必死で呼んでた」 ――何故ならば菱井にとっても、襲われている最中の北斗が襲っている南斗に助けを求め続けた、という事実がショックだったのだから。 南斗の心境の考察を続けながらも、菱井の心中は複雑だった。 もう北斗の中では答えは出ているのではないか、と菱井は思った。北斗の心の中心には既に、いや、初めから南斗がいて、動かせない。たとえ南斗自身でも。 ――その後、更なる紆余曲折を経て、北斗と南斗は兄弟である以前に恋人同士という関係になる。それはここからは、また別の物語だ。 「サンキュー……」 「ホントか? 会長に虐められた、ってのでも良いんだぞ?」 菱井の手が、止まった。 (俺と――俺と優のことは、別に悩みってわけじゃ) そしてここから、菱井と小野寺の話が始まる。
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気がつけばクリスマス直前……やっとTrack 06終わりました。「polestars」の時間軸に沿ったエピソードはここまで。Track 07から(ようやく)菱井と小野寺だけの話が始まります。 |